top of page

研究内容

Scientist in the Lab
Embryonic Stem Cells
Closeup of a Petri Dish

慢性腎臓病の治療戦略の開発と腎機能に基づく薬物療法の適正化

抗がん薬による有害事象のメカニズム解明と予防法の確立

地域の未病医療と災害対応に貢献するための研究

準備中

慢性腎臓病の治療戦略の開発と腎機能に基づく薬物療法の最適化

慢性腎臓病 (CKD) の患者数は経年的に増加し、超高齢化社会の日本では1,330万人の患者が存在すると推定されています。CKDは脳心血管疾患の発症率や死亡率を上昇させるのみならず、様々な病態と深い関わりを持つことが知られてきました。また、多くの疾患において、CKDが予後不良因子となることが明らかにされていますが、その要因は治療選択が制限されるのみならず、CKD患者の用量に関するエビデンスが乏しいために有効性・安全性が担保されない治療が行われることに起因することも示唆されています。CKDは不可逆的な病態として知られてきましたが、早期の薬物治療により腎機能を回復させる研究が進められていますので、治療の開発と既存薬物療法の適正化が課題となっています。

データベースを活用した腎線維化の新規治療戦略の探索

CKD患者の増加は国際的な課題であり、CKDを「治療」する方策の構築が緊要となっています。現時点で提唱されるCKDの進展機構を標的とする治療は、正常な臓器の機能維持にも障害をもたらすため臨床応用に至っておらず、既知の標的とは異なる安全性・有効性の高い新規治療標的を見出す必要があります。本研究は、CKDの主要機構とされている線維化促進機構に影響を及ぼさずに病態を改善する化合物を特定し、CKDの新規治療標的を見出すことを目的としています。従来の創薬研究とは異なり、化合物-遺伝子発現変動データベースの活用により、効率的な化合物スクリーニングを先行して行い、選定化合物の上皮転換メカニズムを細胞株により解析すると共に、モデル動物により有効性・安全性を確認します。また、有効性が確認された化合物の作用機序を解明することで、CKD治療の新規治療標的を特定します。

高度腎機能低下患者の薬物療法における科学的用量設計に向けた生理学的薬物動態 (PBPK) モデルの応用

CKDはがん治療などの多種の疾患の予後不良因子となることが知られていますが、その要因は治療選択が制限されるのみならず、CKD患者の用量に関するエビデンスが乏しいために有効性・安全性が担保されない用量での治療が行われることに起因することも知られています。特に抗がん薬では、開発段階において、腎機能障害患者は除外症例として扱われるため、多くの薬はこのような患者集団の用量を規定することができません。また、市販後の臨床研究を行うための症例数が十分に確保できないことに加え、抗がん薬としての有効性の最大化を意識した治療が優先される結果、腎機能障害を有する患者への投与方法が確立していない薬剤が多数存在します。近年では、腎臓の内科学的な機能評価と悪性腫瘍の病態・治療学を融合した考え方として「Onco-Nephrology」という新しい学術領域が形成されてきました。本研究では、基礎研究から得られた生理学的パラメーターと化合物の有する物性パラメーターを組み合わせて薬物動態を予測する生理学的薬物動態 (PBPK) モデリング&シミュレーション (M&S) の手法を用いて、エビデンスのない高度腎機能低下患者の至適用量をシミュレーションにより解析し、さらに、医療データベースにより、その妥当性を検証します。

新生児・乳児の薬物療法における科学的用量設計に向けた生理学的薬物動態 (PBPK) モデルの応用

妊婦、新生児、乳児においては、臨床試験の実施に対する倫理的障壁と実施体制が未だ十分でないために用法・用量設定に関する情報が乏しく、薬物療法の個別化・適正化が進んでいない現状があります。妊娠期の薬物動態は、妊娠後の週数に依存して、各種代謝酵素の発現や臓器機能が大きく変動します。また、新生児期の薬物動態は、体格の成長とともに、独立して進行する各臓器の機能的な成熟を考慮する必要があるため、投与量の算出において一般的に用いられる体重や体表面積では最適な用量設計ができないことが問題となります。また、各消失臓器に発現する薬物代謝酵素やトランスポーターについても、タンパク質によって発現パターンは大きく異なります。1日ごとに成長と臓器成熟の影響を受ける新生児の薬物動態を正確に把握するためには、多様な妊娠後日数の新生児に様々な薬物が投与された際の薬物動態情報が必要ですが、このような集団のデータを大規模に収集することは困難です。したがって、本領域の薬物療法を個別化・適正化するためには、患者集団の臨床データのみに依存しない薬物動態の予測手法の構築が必要不可欠です。我々は、生理学的薬物動態 (PBPK) モデリング&シミュレーション (M&S) を用いて、これらの集団の薬物動態を予測する手法を構築し、個別最適化のための科学的根拠に基づく用量設計を行うことを目的とした研究を推進しています。

抗がん薬による有害事象のメカニズム解明と予防法の確立

新規抗がん薬の開発が著しい近年において、様々な分子標的型抗がん薬ががん薬物療法の中心的な役割を果たしています。免疫チェックポイント阻害薬の適応拡大が注目を集める中、各種がん診療ガイドラインには現在でも早期治療時点の候補薬剤に分子標的型抗がん薬が名を連ねており、本薬剤の重要性が高いことを示しています。さらに、がんゲノム医療が日常診療に登場したことにより、がん種横断的に分子標的型抗がん薬を適用する機会も増え、がん薬物療法の戦略が急激に多様化しました。分子標的型抗がん薬による治療は、投与スケジュールの改変やバイオマーカーの発見などによりその治療成績は経年的に向上している一方、未だ重大な有害事象の問題が存在します。本研究室では、分子標的型抗がん薬をはじめとする各種抗がん薬の有害事象について、発症の分子メカニズムを解明するとともに、メカニズムベースの予防法を探索し、その効果を基礎研究と臨床研究により検証します。

腎障害

抗がん薬による腎障害もOnco-Neprologyで扱う重要な課題です。古典的な殺細胞系抗がん薬である白金系に代表されるように、多くの抗がん薬が腎機能障害性を有することで、その後のがん薬物療法や併存疾患の治療に影響を及ぼします。また、抗がん薬による腎障害は尿細管障害のみならず、分子標的型抗がん薬によるタンパク尿なども含まれます。これらの抗がん薬に起因する腎障害に対して新規の予防策を構築するための基礎・臨床研究を行います。

間質性肺疾患(ILD)

上皮成長因子受容体 (EGFR)チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)やmammalian target of rapamycin (mTOR) 阻害薬において特徴的に発症する有害事象であり、重症例では死亡につながります。また、ILDの発症は欧米集団よりもアジア人の集団において頻度が高いことも示唆されています。本研究では、ヒト肺胞上皮基底細胞のILDモデル細胞を構築し、発症の分子メカニズムを解明するとともに、ILDモデル細胞を上皮細胞に再転換させる治療・予防薬の候補化合物を探索します。候補化合物が臨床使用されているものであれば、医療データベースによるILD予防効果の確認や臨床試験によりさらなる検証を行います。

皮膚障害(HFSR・ざ瘡様皮疹)

HFSRはマルチキナーゼ阻害薬により発症する有害事象であり、手掌部または足底部の表皮が肥厚することで、歩行時の疼痛や把持困難などをもたらします。本有害事象においては日本人の発症頻度が高いことも特徴的です。HFSRの発症は治療有効性との関連が明らかにされていることから、予防法の確立が急務とされていますが、現状では経験的予防策である保湿剤が用いられており、効果的な予防法が確立していません。我々は、細胞株やモデル動物を用いて、マルチキナーゼ阻害薬が皮膚の表皮角化細胞の増殖を特異的に抑制し、表皮厚を上昇させるメカニズムを解明する研究を進めてきました。これらのメカニズムに作用する化合物を探索し、その有効性を臨床試験により検証します。

bottom of page